イスタンブール・プライドパレードの中止に対する抗議声明

トルコ・イスタンブールのプライドパレードは、LGBT(※レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどを含んだ性的少数者を肯定的にとらえる言葉)とそうでない者たちのための、平和でポジティブな祝祭であり、2014年までの13年間にわたって、毎年開催されてきました。しかし2015年からは、エルドアン大統領に近しいイスタンブールの行政機関や警察によって、無理やり妨害され、中止に追い込まれています。

そして残念ながら、今年、2017年の6月に開催予定であったパレードも、事前に中止を迫られました。その中止命令に抵抗して、当日、開催地に集まった参加者たちは、警官からの激しい暴力を受け、連行された者もいます。以下のビデオはその様子です。

 

このような事態が初めて発生した2015年は、暴徒鎮圧銃や放水車を用いて暴力的に中止に追い込まれる映像がインターネットを通して世界中に流れ、非常に話題となりました。

どうか来年こそは開催されることを願って、2015年に発表された不正義への怒りと、自らの存在をかけた闘いへの熱情とが込められた運営側による抗議声明の日本語訳を、以下に載せておきます。

 

イスタンブール・プライド 2015 声明文

イスタンブールプライドはこれまで13年間にわたり、ずっと開催されてきた。しかし今年イスタンブール当局は、パレードがラマダーン月と重なるという事実を持ち出して、パレードの開催を妨害した。集会、デモ、言論の自由を抑圧する口実としてイスラームの断食月であるラマダーンを用いることは、明らかにトルコの法の支配の原則に触れるものである。つまり、この決定においてイスタンブール当局は、明らかに法律違反を行っている。

 

この違法な命令を実行するに当たり、イスタンブール当局の治安部隊もまた共犯者となった。彼らは数万人にもおよぶ人々―昨年そうしたように、ただ平和的に集まっただけの人々に対してさえ、催涙ガス・装甲車・プラスチック弾を用いて攻撃を加えた。イスタンブール当局から下された憲法違反の命令を実行することで、治安部隊もまた、法的義務違反を行った。しかも襲撃のあったその日、多くの機動隊員は、身元確認のための識別番号やヘルメットを身に着けていなかった。

加えて、ラマダーンを理由にパレードを妨害するという決定は、LGBTという属性とムスリムとしての信仰を、まるでまったく対立する二つのアイデンティティであるかのように表現することで、故意に両者の緊張関係を引き起こすものである。このような弾圧は、LGBT個人ひとりひとりはあらゆる多様なバックグラウンドを持っているという事実を故意に無視し、公衆の面前において彼らを悪魔化することで、LGBTに対する今後のヘイトクライムの下地を作りあげる結果となる。したがって、政府及びイスタンブール当局は、今後起こり得るあらゆるLGBT個人に対する襲撃の直接的責任を負わなければならない。

 

イスタンブール当局はすでに一連の事件に関する声明を出し、その中で、パレードは何の届出もなく無許可で行われたものであり、さらに特定の集団がパレードに対して暴力的な行為を行うという予告を行っていたため、あのような策を取ったと述べた。

だがしかし第一に、もし本当に外部からの襲撃が発生するという確実な情報があったのなら、集会の権利を実行しようとしただけの集団自体を攻撃するのではなく、そのような襲撃を阻止するための手段をとることが当局及び治安部隊の義務であるはずだ。

第二に、集会・デモ・パレードに関する法律2911号および憲法のそれに該当する箇所の両方において完全に明白なことであるが、そのような集会は当局の特別な許可を必要としないものであり、一切の関係機関に事前通知する義務すらないのである。タクシム広場で6月28日日曜日に予定されていた、毎年恒例で今年13回目となるLGBTプライドパレードは、したがって、どんな法律違反も行ってはいない

 

にもかかわらず、さらにパレードそれ自体が禁止された後も、警官隊は路上に集まった市民を何時間にもわたって攻撃し続けた。プライドパーティーが開催されていた会場および路上に対する催涙ガス弾とプラスチック弾による攻撃は、一晩中通して行われた。警察のこのような振る舞いは、ただ「無許可」のパレードを阻止することをはるかに超え、もはやわれわれのアイデンティティとわれわれの存在に対する攻撃である。

パレードに参加しにやって来た無数の人々が治安部隊の襲撃による被害を受け、重症の診断書を持っている者も数多くいる。この場を借りて、われわれは日曜日の警察による暴力の被害者となったすべてのLGBTの仲間たちとそのサポーターたちの速やかな回復を心から祈りたい。

 

長年にわたりこの国は、LGBT個人に対してもたらされてきた制度的暴力を故意に無視してきただけでなく、その加害者の罪を軽減さえしてきた。しかし今、トルコでLGBT個人の生存に対して直接的かつ物理的な暴力を行なっているは、この国自体なのだ!

 

そのうえ、6月26日金曜日に「LGBTの権利を保護する」ことを国連に保証した、まさにその同じ国が、6月28日日曜日に何の法的裏付けもないままに、第13回イスタンブールLGBTパレードを襲撃したという事実を、われわれは全く受け入れることができないでいる。

金曜日の国連の会議において、「トルコはLGBT個人およびそれに関連するNGOの権利を守ることで、人権に関する義務を果たすべきである」というノルウェーからの提案をトルコ政府は承認した。また、トルコはさらに、国連の枠組みの中で承認されたあらゆる提言を実行に移すことを宣言した。だがしかし、そのわずか二日後に政府はこれらの提案に対する違反行為を行ったのだ。

 

もう一度繰り返そう。われわれは今までもここに存在してきたし、今もここに存在しているし、これからもずっとここに存在し続ける。

 

トルコではLGBTプライドパレードが13年間にわたって開催されてきた。このパレードは、1969年のストーンウォール暴動を記念し、23年間ずっと開催してきた6月下旬のイスタンブールプライド週間の、さまざまなアクティビティのうちのひとつにすぎない。われわれは権力の座にあるトルコ政府の妨害があろうとも、存在のための戦いを貫き通すだろう。われわれはあらゆる形態の抑圧に抵抗し続ける、長年そうしてきたように。われわれはここにいる。そのことを受け入れろ!

 

7月2日木曜日の12時半、われわれは正式にイスタンブールのÇağlayan裁判所において、内務大臣Sebahattin Öztürk、イスタンブール市長Vasip Şahin、イスタンブール警察長Selami Altınokを相手取り、第13回イスタンブールLGBTパレードに対する襲撃を命令した責任を問う刑事訴訟を起こす。われわれは全政党、全労働組合、民主主義を愛する全トルコ市民、そして国際的なNGOに対して、われわれに歩み寄り、この訴訟への連帯を表明してくれるよう呼びかける。